山形市緑町三丁目

ここは山形市緑町三丁目にある専称寺の塀の前である。この周辺には十五を数える寺院があり、かつてはこの一帯を寺町と呼んでいた。

専称寺は一五九八年、最上義光が豊臣秀次の側室としておくった娘の「駒姫」の悲運な死を悼んでこの地に天童より移建したものである。現在の本堂は一七〇三年に再建され大屋根の高さは二十五mの大型木造建築物となった。

市の中心部の近くにあるこの界隈は日中もひっそりと静かである。専称寺の境内は疏水、山形五堰の一つ御殿堰が静かなせせらぎを聞かせてくれている。大きな木々の枝葉はそこに夏の陰をおとしている。実に穏やかな空間がここにあるのだ。それはこの目の前にある風景だけが与えてくれているのではない。数多くの先人たちが築き上げてきた偉業と歴史がこの寺町を訪れる私たちの心に何かを語りかけているからに違いない。

平成二十年 夏